“子供のために投票しよう”キャンペーン“がペルーて行われた2006年

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“子供のために投票しよう”運動は、「ペルー働く子ども・若者全国運動」(MNNATSOP)と学童市議会の活動の一つである。
 キャンペーンの目的は、2006年度の
大統領、国会議員、県知事、及び市長選挙の立候補者に対して、子供たちのことを十分に配慮した政策を提案するよう要求することである。特に、大統領選立候補者に対しては、子供たちが抱える問題に対する解決策の早期立案を誓わせようという狙いがあり、それに併せて投票権を持つ大人に訴えることも焦点に据えた。

 ナソップ運動と児童市議会メンバーは、各県でキャンペーンを展開。国会議員立候補者やメディア関係者に向けた集会などを開催し、政府の政策立案者との議論の場を設けるなどした他、様々な行政機関を訪れては、子供たちが抱える問題を訴えたという。

“子供のために投票しよう!”キャンペーンの一環として、ペルー各都市の広場で市民との対話の場を設け、子供たちが抱えている問題を市民がより明確に理解できる機会も設けた。キャンペーンスローガンを掲げて街中をデモ行進するして、投票者が子供たちの問題により具体的な解決策を提案できる候補者へ一票を投じてくれるように呼びかけた。結果として7名の大統領候補者及びその代理人が、ナソップ運動が作成した以下の誓約文に対して署名した。

誓約文
1  子供に関する政策の作成や決定の際には、子供たちが積極的に参加する権利を認めること。
2 国家や社会レベルまたは家族内で頻繁に繰り返される、子供に対する精神的、肉体的虐待に対する解決策を早期に提案すること。
3 子供のニーズを真に満たすことのできる公教育の場を提供すること。特に、教師の再教育、及び教育部門に対する公費の大幅増額を要求する。
4  働く子供たちの権利を保護し、彼らに対する相応の社会保障を確約すること。
5 栄養不良状態にある子供たちに対して、無償の食事提供プログラムを開始すること。国内に現存する栄養不良問題全般を早期に解決すること。
6  児童の性的搾取に対する予防、撲滅に努めること。

 ペルーには、Movimiento Nacional de Ninos, Ninas y Adolescentes Trabajadores Organizados del Peru 「ペルー働く子ども・若者全国運動」←クリック がある。

 1970年代末、ペルーは深刻な経済危機に直面。多くの子どもたちが、苦境にある家族の収入を補うために様々な仕事をせざるを得なくなった。 1976年発足のMANTHOC(マントック : 解放の神学派神父、働く子ども、労働者の子弟たちによる運動)を母胎に1996年自立。ペルー国内の働く子供たち自身の運動体として「ペルー・働く子ども・若者全国運動 MNNATSOP(ナソップ運動)」が結成された。
 ナソップの特色は、子どもを保護指導すべき客体として扱うのではなく、社会における不可欠の主体と見なすプロタゴニスモ(主役主義)にある。6、7歳から17歳までの子供たち自身が全国的な運動体を担っている。
 彼らは、働く子供たち自身が、何故働かなくてはならないか、子供たちが働かなくてはならない社会をどう変えていくべきかを討論している。それぞれのメンバーが住んでいる地域の子供たちとさまざまな機会を作って働く子供たちの抱える問題を認識するための話し合いを行っていく。ゆったりとした、しかし忍耐強い運動体だ。

 14歳のリサンドロ君は、「働く子供たち」問題の若き論客として知られ、ラテンアメリカ、ヨーロッパの子供たちの集会、会議にたびたび招待される。
 リサンドロは、「チェは銃を持っていたけど、僕らは持っていない。社会システムは変わり続けていると思う。一番よい革命の方法は、知恵を使って他の人を傷つけないやり方だ。チェは一人の主役を考えたのでなく、集団として主役である社会、人の上下がなく全員が重要であり、経済的理由で差別されない社会を目指し考えた人だと思う。僕らのプロタゴニスモの考えと共有できる」と考え「人はただ単に働くのでなく社会の中で果たすべき責任がある」と仲間たちに伝えたいと訴えている。
 また 13 歳のリサンドロ・カセレス・ゲバラは、自らが働くことについて「(児童労働がなくなるとよいという意見について)―あまり賛成できません。僕はペルーが経済的に良くなっても働き続けます。働くことは権利です。自分たちがただ何かを求め、お願いする存在ではなくて働くことで自分たちの存在や尊厳を守りたい。誤解されているようですが、自分たちは危険な仕事や強制された仕事を拒否し、尊厳ある仕事をしたいのです」と胸を張る。

  ナソップ運動において、大人はあくまでコラボラドール(協力者)という役割に徹する。
“子供たちと共に”活動をより活気あるものにし、“子供達と共に”運動に参加する存在であり、運動における子供達の主体的立場に成り代わることはない。重要な点は、コラボラドーレスは子どもたちから選ばれていると言うことだ。

   ペルー国内の働く子どもの数は2006年の時点でおよそ217万人。これは6歳から17歳の子ども人口710万人の約30%にあたり、都市部で暮らす子どもの5人に1人、農村部で暮らす子どもの5人に4人がなんらかの形で働いていることになる。

  このほかにMNNATSOPが、多くのことに取り組んでいる。マイクロ・ファイナンス・プログラムもその一つ。
 働く子供たちがコラボラドーレスと共に物の売り買いについてのノウハウを学び、実際の生活の場に生かしていくことを目的とした取り組み。
  国連・子供の権利委員会による政府に対する勧告内容の普及活動も欠かせない。
 また、日本国内ではあまり知られていないが、作家永山則夫は印税をナソップ運動に託した。この資金はナソップ運動事務所建設にも使用された。永山則夫は働く子供たちと共に生き続けることになった。働く子供・青少年の教育機関であるINFANTはINFANT-NAGAYAMA NORIOと名付けられている。 

注 プロタゴニスモとは、ペルーにおいて60年代後半より始まった一連の政治改革の中で生み出された、民衆組織による「主体的」、「自立的」参加を社会変革のための重要な要素として推進する立場を示す言葉。
 この精神は、70年代半ば以降に誕生する働く子供達の組織(マントックやナソップ運動)にも引き継がれている。子ども達は運動の経験を通して、プロタゴニスモの定義が及ぶ範囲を、社会変革への主体的参加を提唱するだけの言葉から、政治的な場面に限らず、日常生活においても、社会の行動主体として相応しい人格や行動を身につける必要性を唱えた言葉へと発展させている。働く子どもたちはプロタゴニスモをみごと、再定義したのである。

追記 日本の高校生が、選挙公報の真偽の確かめようのない情報のみで、投票ごっこをさせられるのに比べれば、ペルーの働く子どもたちの行動は、質の高い本物の政治活動である。

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